昨年、友人が「知人の おもしろいギャラリーがあるから、行こうよ」と誘ってくれた。
旧中山道の風情が残る、中津川市 落合 下町に、曽我すみ子さんのギャラリーがあった。
築200年という江戸期建築の古民家。
中に入ると 土間に 手織り機が3台ある。
土間を下がっていくと 中庭に出る、珍しい家の造りに驚いた。
店主の曽我さんは、以前は他所で、民宿、スナック、ディスコを営んでいた。
そのころ、いろいろと 身の変化に伴ない 自信を無くして失意の中でもあった。
悩んでいたとき、
旧い 眠っているような糸が、織り機にかかると、あたかも目覚めたかのごとく、きれいな反物になるのを見て、
身が震えるようだった。
私も こんなことをしていてはいけない、しっかりしなければ、と 目が覚めた。
織り物の、その先生に頼み、教えを乞うようになった。
幸い、織り機も貸してあげると言われ、
うれしくて、うれしくて、寝るヒマも惜しんで 織っていった。
そのうちに、糸も草木染めで 染めたくなった。
自分の求めていたことに出会い、夢中になれて、迷いはなくなった。
ミシンで洋裁も得意だったので、仕立てもした。
工房とギャラリーがやれたらと、大きな希望も湧いてきた。
そんな折り、名古屋で 彫金を学んでいた長男も、中津川へ帰ってきた。
運が向いてきたように、不思議と 良いほうに 良いほうへと、巡ってきた。
落合宿の街道筋に、昔 庄屋だったという古民家を、貸してもらえた。
年代ものの建具、調度品は残し、必要な箇所は息子と自分の手で改装した。
長男の彫金に、曽我さんの手作り作品の数々。
委託販売の陶器、ガラスの作品などが並ぶギャラリーが誕生。
建物まるごと博物館のような空間に並ぶのは、好きな人に響く、こだわりの作品が多い。
曽我さんは、「草木染のできる植物は、人間に対しても優しい。昔の人は体調が悪いと、草木染めの服をなめれば治ったそうよ」と言われる。
ディスプレイに使われるものにも こだわり、ジャンクな古雑貨を多く使ってある。
竹の ふたつきのカゴ(店主によれば 農家の人が畑に行くとき弁当を入れていたもの)に、織った布地を掛けてある。
古民家ならではの室礼と お見受けした。
商品の作品と空間のセットでも、曽我さんのセンスが光っている。
ギャラリーで接客しながら、奥のアトリエで 毎日 制作もしている。
ほかに商品の企画、制作の予定作り、在庫の管理に、家事もと、やることがいっぱい!と言いながらも うれしそう。
今後は自分ひとりだけでなく、希望者には一日千円で講習もして、仲間作りもしていきたいそうだ。
この一年に三度、この店を訪れた。
「昨日 これが織り上がった」と見せてくださった。
絹の 細い 細い 糸で織り、10日間かかった、とか。
夏の夕暮れに、優しい瞳が 輝いていた。
【クラフトショップ LABORATORY 主宰:曽我 すみ子さん】
「クラフトショップ LABORATORY」主宰:曽我 すみ子さん
お店:岐阜県中津川市 落合831(旧中山道 落合宿の中ほど)
電話:0573-69-3562