赤染 晶子・著 『 うつつ・うつら 』 文藝春秋・刊
(本書はⅡ部構成の作品集:「初子さん」と「うつつ・うつら」)
赤染晶子さんの「初子さん」を読もうと思ってたら、
7月15日に第143回芥川賞で受賞のニュースに少し驚いた。
(受賞作品は『乙女の密告』:「新潮」6月号)
『うつつ・うつら』の中に、もう一編 収められているのが「初子さん」。
少しおんびりとした 若い女性で、パン屋さんの二階に下宿して、洋裁の仕立てをして生計を立てているのが、主人公の初子さん。
このパン屋の夫妻も、アンパンとクリームパンのみ販売していて、時々 中身を入れ間違うという人間味あふれる人物。
30年前には こんな生き方をしていた人が多くいたのだ。
なつかしかった。
著者はまだ35歳。
「初子さん」に登場するパン屋の娘のモデルかなあと思われる。
でも、この女の子は小学校一年生なのに、学校から家への帰り、いつも迷子になるような素朴な少女。
読んでいて ほっとする時代を感じさせてくれました。
2004年の第99回文学界新人賞受賞の作品。著者は短い間に、こんなに賞に恵まれた天才作家かも・・。
これから 期待してます。
【写真】第143回芥川賞・直木賞受賞者決定を報じる日経新聞2010.7.16.号。 赤染 晶子・著 『 うつつ・うつら 』 文藝春秋・刊。2007.5.10.第1刷発行。@1200e 初出:『初子さん』:「文学界」2004年12月号。『うつつ・うつら』:「文学界」2005年10月号。