四代目 江戸屋猫八さんが襲名披露される。
この人のことばで 好きなことばがある。
「母親の澄んだ目は、産まれてくる子供にとっては貴重な宝である」。
そして、
「人間を信じる真っ直ぐな眼差しが、真っ直ぐな人間を育てる」。
弟子入りして修行を始めてから、師匠からはマニュアルめいた手ほどきを受けたわけではない。
大工の棟梁が、手元、足元、背中を見て、所作とワザを盗むようにして覚えろ、というのに通ずる。
木に語りかけ、木の声を聞き、施主様、お客さまの暮らしと人生に沿うようにだけを考えろ。そして、より高いところを描いて 精進を重ねる。
一瞬一瞬の感動を大事にし、心身の奥深く刻み込んでいただけるこだま(木霊)が聞こえるまで入魂して、ワザ(芸)に打ちこむ。
文字通り「一心不乱」の所作・所為にこそ、自分の全てが現われる。
そのとき、澄んだ、真っ直ぐな眼差しで、入魂できるか、だ。
一流を極めていく人は「珠玉のようなことば」がポロリと語られるし、一挙手入魂の緊張感が(僭越だが)心地よい。