since20110927  動画チラシ



25 補足 子孫に美田を残さず、および日本の祭

  「父から息子への手紙 パート2」は一応終わることにする。
  君に手紙を買いているうちに、だんだん心が整理されて落ち着きを取り戻した。  「白雲おのずから去来す」これが今の心境である。禅語であるからなかなか奥が深いぞ。雲が出てきて陽が陰っても動くな、じっとしていろ。そのうちに雲はおのずと去ってゆく。陽を追いかけて自分が動くと雲もついてくるぞと解釈した。
  ところで私はほぼ30年近く公職者人生を歩いてきたが、君や家族に対して自分なりの一つの金銭的な価値観を持ってやってきた。それは、西郷隆盛の言葉だが「子孫に美田を残さず」だ。公職者というものは絶対に立場を利用して財を成してはいけないと固く心を戒めてきた。
  力のない父親に思われるかもしれないが、君に残す物は何もない。しかし、しかしだ、心は大きなものを残したい。大きな志を君に残したいという意識で私は君の母親鈴代と常に一体となり頑張った。私の両親三千と静も、金銭には潔癖な商売人として人の信用を得、その信用を財産として私に送ってくれた。何よりの相続であった。
  家族の絆は強い。家族の絆は永遠に続く。家族の絆に支えられてこそ大きな仕事ができる。
  最後に、これからの私の生き方についても少々触れておこう。とにかく何か世間のお役にたつこと、人様のために働けることをしたい。そこで考えているのが「犬山祭保存会会長」の肩書を生かすことだ。
  日本の祭はすべて日本人の宗教観が根底にある。「まつり」の語源は「まつる」から来ているように「神をまつる」ことだ。神とは何かというとそれはご先祖の神である氏神様であったり、土地の神様である産土神(うぶすながみ)である。いわば血縁、地縁を大事にするのが日本の祭の原点だ。 ドイツのテンニースという学者が社会の発展形態はゲマインシャフトからゲゼルシャフトへ移行するといっているが、ゲマインシャフトとは共同体社会、いわゆる村社会だ。ローカリズムといってもいい。ゲゼルシャフトとは利益目的社会、大都市や国家や株式会社のことだ。グローバリズムといってもいい。
  東日本大震災で明らかになったように、今日本というより世界中で見直しが始まっているのがゲマインシャフト、共同体の再生である。それが日本の祭の意味だ。
  私は政治家として「シンクグローバリー・アクトローカリー」というスタンスで仕事をしてきたが、この考えこそ日本の祭に宿る精神である。
  このことについては今後もう少し理論的に研究する必要がある。また、犬山祭は国の文化財指定を受けているので、全国の祭り関係者と相談をし、日本再生のため世間に問題を投げかけてみようと考えている。
  最後に、母親鈴代とともに最大の愛情と期待を君のこれからの人生に捧げて終わる。