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14 犬山市長時代・地方分権の時代の中で

  私の座右の書は「論語」である。「論語」に出てくる孔子は最晩年自分の一生を振り返り十年ごとのライフステージを次のように述べている。
   我十有五にして学に志す
   三十にして立つ
   四十にして迷わず
   五十にして天命を知る
   六十にして耳順(みみしたが)ふ
   七十にして己の欲するところに従い則(のり)を超えず

  井上靖が最晩年に「孔子」という小説を書いたが、そのテーマは天命だった。要するに五十代の生き方は天命なのだ。私の犬山市長時代は天から与えられた使命だという思いを込めた10年間だった。
  折しも就任1か月後に、国会で「地方分権」が決議された。
  わが国は140年前鎖国から開明し明治政府という近代国家を作り、以来強固な中央集権国家として世界史の中へ入っていく。60年前の敗戦によって大きな改革はなされたものの、依然国家の統治構造は極度の中央集権だった。
  その歴史に大きな転換が興り、今までの中央と地方の関係が上下・主従から対等関係となるのだ。私はこの「時代の思想」に飛びついた。「地方分権」を進めることこそ私の天命だと認識した。世界経済のグローバリズムと我が国の未曾有の少子高齢化がこの歴史的変革を余儀なくしていた。
  市長就任後即手を付けたことがある。人事と行政改革と福祉医療問題だ。
  まず人事。「メンデルの法則」というのがある。互いに異質の種を交配することにより品種改良され、よりグレードが上がるという、いわゆるハイブリッドの効果を狙ったものを市役所の職員から始めた。まちづくり部門に建設省から田村氏といういわゆる中央官僚をむかえたり、愛知県から瀬見井教育長や川島助役を就任させたりその他意識的に多彩な人事を「交配」させた。一度役所の中を人事でひっかき回すことによって活性化させるようなイメージを描いた。
  その後、田村さんは城下町再生に、瀬見井さんは教育改革に、川島さんは市民活動支援政策にと発展していくことになるがそれぞれのテーマは後で語る。
  2番目の行政改革はまず情報公開から手を付けた。就任直後「市長交際費」と、職員の交際費にあたる「食糧費」を全面公開した。当時三重県知事の北川正恭さんが県庁内部の裏金問題を究明、話題になっていたので、北川さんの手法を勉強し、さまざまな行政改革に取り組んだ。同志社大学のところで述べたが、大学で学んだ会計学が役に立ち、財政運用や行政評価に新しいシステムを実験的に導入し、職員に勉強してもらった。
  私は基本的には公務員擁護論者だ。公務員はたいていが真面目で、目的さえ明確に指示すればきわめて有能な集団となる。
  この時の改革が、東京で自治体行政を支援するNPO「地域交流センター」の主催者田中栄治さんと出会うきっかけを作り、後々「全国首長連盟」の結成、さらに「提言・実践首長会」の代表となる流れに発展していく。この活動は、PHP研究所から出版した「国の常識は地方の非常識」にまとめた、一読して欲しい。
  医療・福祉改革については次に述べる。