国破山河在 城春草木深
感時花濺涙 恨別鳥驚心
烽火連三月 家書抵萬全
白頭掻更短 渾欲不勝簪
杜甫がこの詩を詠んだのは、四十六歳の時。
杜甫は当時、安禄山の乱の奇遇に出逢い、長安の都で囚われの身であった。
ある日、許しを得て近くの丘にのぼった杜甫が目にしたものは、
戦乱続きで変わり果てた都の姿であり、それとは対照的に再生の春を迎えて、緑生い茂るみずみずしい山河の在りようであった。
この眺めに、こみあげる万感の想いを託したのが、後世に残る五言律詩「春望」。
以来千二百余年、その興趣と余韻で、多くの人々に感銘を与え続けてきた名漢詩。
国破れて 山河在り
城春にして 草木深し
時に感じては 花にも涙を注ぎ
別れを恨みては 鳥にも心を驚かす
烽火(のろし) 三月(さんげつ)に連なり
家書 万全に抵(あた)る
白頭 掻けば更に短く
渾(すべ)て 簪(しん)に勝(た)えざらんと欲す
【写真・出典】東京銀座・美術通販「トップアート」の掛け軸・新聞全面広告より。2009.3.16.日本経済新聞。