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玩物喪志という言葉がある。物ではないが、趣味とか道楽にのめり込み、それを人に話すことは控えめにすべしと心がけてきた。が、趣味世界から自分の人生の成熟を知ったり、ヒントを得ることもある。
私の趣味は走ることだ。子供のころから走ることが得意で、運動会の前日など興奮してなかなか寝付かれなかったし、当日はほとんどヒーローだった。まずかけっこをして負ける事を知らない少年だった。競技者としては一流にはなれなかったが、走ることが得意で、好きだったので、以来60年以上走り続けている。
今日犬山シティマラソンで10キロ走った。このイベントは中京大学教授の小林義男さんが生みの親だが、犬山市長になった直後、どこか外国のシティマラソンと提携できないだろうかと彼に相談した。小林さんはアメリカに留学の経験があり、カリフォルニア州デービス市のシティマラソンを見つけてくれた。 そこで私は小林さんとデービスまで出かけ、ホームステイし、走ってきた。まずシティマラソン同士が姉妹提携し、それが発展し、犬山市とデービス市が姉妹都市になり、その後両市の市民は毎年交流をしているし、多くの出会いやドラマが生まれた。デービスに行った時初めてアメリカの地方議会をウヲッチする機会を得、市長や議員に会い地方自治の実態や、アメリカンデモクラシーを学んだ。例えば、日本ではシティマラソンに市行政は多額の助成金をつけるが、デービス市民はそんなこと考えもしない、すべて市民一人一人の参加費で運営されていた。また、市役所の職員など日本のように動員せず、ただ、道路使用のため行政が関与するくらいのことで、まったく民間の運営に任されていた。
個人的な趣味が仕事に生かされ、社会に広がりを持ち、貢献できた例だと自負している。
走ることにかくも年季が入るとほぼ自分の速さは計算できる。時速10キロで走ると、一歩の歩幅は1メートル、歩数を数えれば距離が出、タイムもほぼ設定できる。今日は10キロ60分の予想し、59分20秒で走ることができた。体が時計になっている。
若い頃は自分より年配の人や女性やフォームのおかしな人に追い抜かれるとカッとなり抜き返したり、ペースを乱されリズムが狂うことがあったが、この年になると周りには無頓着、終始マイペースを守ることができ、自分の精神的成熟を見ることができた。
木曽川沿いを走りながら、真冬の真っ青な天空に雪を置く伊吹山や、屹立する犬山城の美しさに息を飲むゆとりもあった。
たかが走ることだが、私にとっては人生の縮図にさえなっている。