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岐阜県加茂郡八百津町久田見に伝わる祭を見に行った。犬山から車でほぼ1時間。近くにありながら、今まで見たことがなかった。 八百津は木曽川と飛騨川の合流する地点、民謡木曽節にあるように木曽材をこの地で筏に組み、犬山まで流してくる中継地でもあった。 久田見祭はそんな、木曽と飛騨と美濃が混血し、尾張へ至る山間の小さな部落に凍結され、春風に解凍された絵巻物の世界だった。
「だんじり」と呼ぶ曳山が6台白髭神社と神明神社にお練りする。背中に大きな御幣を担いだ馬が「だんじり」を先導する。「だんしり」のからくり奉納の前に獅子が舞う。祭りの原型がきちんと継承されていて、まず感心した。ここの祭の一大特徴は、「糸切からくり」と呼ぶからくりの様式にあり、国の文化財指定になっている。
6台の「だんじり」は二輪車で高さ5メートルくらいの2層構造、彫り物もよし、水引幕も鮮やか。上階で舞うからくりは毎年演目を変える。同行した、ロボット研究者の末松さんが、これはまさに江戸時代のロボットコンテストだと言った。犬山祭も当初は二輪車の大八車で曳いた記録に接したことがあるが、ここでも祭りの原型を観る。年々過疎化している地域らしいが、逆にこの祭が過疎化に歯止めをかけていることは確実である。
祭りを楽しむ住民の表情がいい。ここの部落の人たちの一年はこの祭りのためにあるに違いない、2日間の祭のために絶えず準備し身構えていると思われる濃密な空気がそこにはあった。寄合が、人と人との絆を生み、支え合う共同体を形成しているのだ。そしてその中心にご先祖を祀る神社があり、歴史継承への求心力の精神性を育むという構図だ。
盛りを過ぎた桜が、はらはらと祭を楽しむわれわれの頭上に舞った。暮れ泥む帰り道、春風が山里に運んでゆくあの祭囃子は、体に染みついた日本の旋律であった。