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日展鑑賞。若いころ秘書を務めた江崎代議士は美術品鑑賞が趣味だった。画家や彫刻家との交流もあったし、骨董屋へも同行したことがしばしばあった。で、私も議員となってから美術館へ行くことは趣味の一つとなり、毎年の日展は行くが、作品数と来場者が多すぎで正直静かに観賞できない。ざーと見て、私の好きな書の部門に時間を割くことにしている。書は好きだ。犬山祭保存会の会長をしていた時、祭りの幟旗をお習字の師である菅原智芳さんに書いてもらった。大きな幟旗が春風にはためき白地に黒々とした「犬山祭」の字が生きたように踊るさまを見た時から私は書の美しさに魅せられた。美術館の額に収まった書は、どんなに豪快なものでも、春風に舞い躍動したあの時の書に比べると死んでいる。
話はそれるが、今年の直木賞受賞作、安部龍太郎の「等伯」を読んだ。犬山にある国宝茶室「如庵」の書院で「四愛図襖」を見て長谷川等伯を知り、国立美術館で「山林図屏風」に接し、震えた。小説「等伯」を読んで今更ながら思ったが、美術品にも作家にも時代背景というものはおのずと出る。等伯は、信長、秀吉、家康の政治的激動を掻い潜り絵を描いた。文字どおり、生き死を懸けて創作に打ち込んだ。
日展という、言ってみればセレモニーみたいなところで打たれるような感動は望むべきではないかもしれないが、美術館全体に漂う作品群から、何となく不安定ではあるが、切迫した危機はない時代背景のようなものを感じ取った。