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12月31日 敗北を抱きしめて

12月31日 敗北を抱きしめて

パーマリンク 2013/01/02 10:43:10 著者: y-ishida2 メール

中部大学の三浦陽一教授と親しくなり、翻訳された「敗北を抱きしめて」をいただいた。日米両国でベストセラーになった名著で、感動とともに今日読み終えたので、さっそく三浦さんに以下のような読後の感想をメールした。
拝啓 三浦陽一先生

ただ今「敗北を抱きしめて」読了しました。何とか年内に読み終えることができ気持ちの一区切りに間に合いました。
歴史というものの持つ大きな感動と、名著の醸す読後の充実感の余韻が全身に充満しています。
正直私は翻訳物を読むのは苦手です。まず、外国語の文体は読みづらく、難解な文章が多いのですが、この「敗北を抱きしめて」はまず文章の上手さに感心しました。ほとんど翻訳という壁を感じさせず、ぐんぐん物語に引き込まれ、それこそ寝食を忘れ、久しぶりに読書の醍醐味を味わうことができました。著者ジョン・ダワーの力もさることながら、訳者三浦先生のお仕事にまず敬服です。
私は、1945年10月の生まれです。このドラマは、私がこの世に生を受けた2か月前から始まっています。明治に生まれ、日中事変に参戦した私の父親のこと、私の受けた戦後教育、そして社会人となって政治と言う職業に就き、日本の行政システムの中で、考え、反問してきた、私の人生のすべてを、違う角度から解き明かし、解説し、私という日本人を今世紀の世界史の中に位置づけてくれたような気がしました。
私は従来、憲法問題に極めて重大な関心を持ち続けてきましたが、この度、改めて新憲法の成立過程を学習し、現在多少湧き上がりつつある憲法改正の世論に対して考えるヒントを掴んだ気がします。
現在の日本国憲法は、天皇制というナショナリズムを死守する日本と、世界史の中でグローバライゼーションの典型であるアメリカという国とのハイブリットであるというのが私の考え方でした。この感を今回の読書によって更に深めた思いです。
今後、われわれはこの異質な価値観、矛盾的同棲をどうやって持続可能にしていくのか、世界史的、壮大な挑戦であると思っています。
私見を申し上げるならば、今の日本国憲法は天皇制、戦争の放棄、民主主義の実現のほぼ三点の議論に集中しました。「敗戦を抱きしめて」という卓越したドキュメントにより国家の統治システムについての深い議論は抜け落ちたというより、逆に官僚支配、中央集権が強まったということが確認できました。
今や、地方自治体の自立を中心に、タウンミーティングやNPOなどの市民活動による地域主権に国のガバナンスをシフトする憲法改正を私は主張いたします。
学ぶこと多き偉大な著作でした。
その機会をお与えくださいました先生に心から感謝申し上げるとともに、いずれお目にかかり懇談することを楽しみにしています。
よき新年をお迎えください。

12月31日 
石田芳弘

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