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9月10日 はだしのゲン

9月10日 はだしのゲン

パーマリンク 2013/09/13 09:19:40 著者: y-ishida2 メール

漫画「はだしのゲン」が、松山市教育委員会により市内の図書館で自由に読めない決定がなされ、物議をかもした。すぐメディアが反応、教育論の立場を超えて歴史認識、表現の問題、戦争体験などの視点から議論が広がった。このニュースの詳細を聞いて自治体行政の経験から言うと、まず松山市の市長と教育長の主体性のない凡庸な姿が浮かんだ。最後は撤回したが、お粗末な決定をしたものだ。
が、まだこの漫画を読んでいなかったので、さっそくアマゾンに発注、半月以上たった今日やっと手に入り、全10巻読了するのにまる2日かかった。
まず漫画というものについて述べる。私は20年前、犬山祭のからくり人形の解説を文章で説明するより絵で描いたほうが子どもに分かり易いと考え、「蘇えったからくり人形」という著作を物した。漫画を友人の土屋さんというプロに書いてもらったが、ストーリーは土屋さんと相談しながら作った。そして登場人物のセリフは私が考えたが、これがとても面白い経験だった。一冊作ったくらいで知ったかぶりは慎みたいが、丁度映画の脚本のセリフを書くように平易な口語体で表現でき、漫画は小説などよりむしろ映画表現に似て、現実がより濃厚に理解されるという感想を持った。漫画「はだしのゲン」によって、原作者中沢啓治の強烈な原爆批判と反戦の思いは子どもたちに確実に伝わってくる。
本論に入る。戦前の軍国主義や大東亜戦争の戦争責任は昭和天皇にあるのではなく、天皇の意向を笠に着て、天皇を利用した政治家・軍人の指導者とその解釈を可能にした明治憲法にある。その点で、作家中沢啓治と私とは見解を異にするが、それはそれで貴重な体験談として尊重したい。
それ以外は、長崎の原爆被爆者としての主張に迫力があり、明快で正義感と生命力に富み、子供が読んだら戦争の残虐さ悲惨さが必ず理解できる物語だと思った。この本を子どもが読むと間違った価値観を持つと主張する人は教育の何たるかを理解していないか、子どもの想像力を見誤った人であろう。
更に、原子爆弾を落としたアメリカに対し執拗に批判を繰り返すこの歴史的証言が、世界中に翻訳されている普遍的な理由になっているのではないかと感じた。
今回の1件を巡って松江市教育委員会の決定を支持する意見もあるし、文科大臣も多少ぼやけた発言をしている。それらの言動に私は、何となくアメリカに対する遠慮を感じてしまう。こんな反米の鬼のような漫画を子どもに読ませてはならぬ、アメリカとはあえて事を荒立てないほうがいいという盲目的な追従の気持ちがあるのではないかと勘ぐってしまう。
東日本大震災の原発事故が起きた今、広島・長崎の原子爆弾の歴史が重なり、今回の論争は深いものを感ずる。

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