15『絞り・染物教室講師』

今、旬の女性加藤龍音
ある集まりでうすいピンクの有松絞りのコートを着た女性(ヒト)が印象的でした。その人が加藤龍音さんとの出会いでした。

加藤さんは会社勤めをしていたが、退職後、何をしようかなと思っているとき、有松絞りに魅せられた。
(絞りは、絵刷りをした生地を縫って絞ったものを染め上げる)。
絞美苑工房を訪ね、榊原あき子先生について習い始めた。
加藤龍音さん
加藤龍音さん作絞りは、京都では20通りくらいだが、有松・鳴海では75通りを超えるくらいの多様な技法を駆使して絞りと染めを行なっている。趣味では十年以上経った今も駈け出し。一人前には遠く、まだまだ学ぶべきことばかり、と控え目にお話される。手作業の染めは、経験に加えて勘だとかコツが大きな比重を占める世界でもある。

草木染めも本を頼りに自分で試していた。行き詰まっては、自分ひとりで力の限界を感じてはいたときに、池谷昭三さんという染色作家と出会った。加藤さんの自宅は、幸いにも犬山市の郊外で自然豊かである。近所の山、野原、河原にあって、殖え過ぎた帰化植物や雑草(タンポポ、ヨモギ、くずの葉、月見草)を摘み集め、次つぎに染めて楽しんだ。
加藤龍音さん草木で染めた色はおだやかで、見る人の気持ちをいやしてくれる。
自然がつくりだす色彩に感謝しながら、
自分流のやり方で布を染める。
3年前、さら・さくら(犬山市民健康館)にさくら工房ができた。
自分でもここでなら、少しはお手伝いすることが
できるかと思い名乗り出て、絞り・染物教室で
講座を受け持つことができた。

加藤龍音さん作同じころさらに自分ももっと勉強したくて、絞り工業組合主催専門課程に参加し、
巻き上げ絞りと折り縫い絞りを習った。

初めのうちは自分流の悪いくせを直すのに苦労した、と伺った。
ここでやっと自分の知りたいと思っていることがわかりつつある。
私の理想とする絞りと染めに少しでも
近づけるようにがんばっている。
今年の夏には愛・地球博市民パビリオン「草の文化折り紙プロジェクト」のリーダーとしても活躍された。秋には「さくら工房の講座受講生作品展」を控えて、日々いそがしい。夢は近い将来に、畑でいま育てている綿を紡いで糸にし、織りあげて染色するまで全部を自らの手で仕上げてみたいとのこと。

一人息子は独立し、いまは夫と二人の静かな生活(くらし)だが、加藤さん自身は毎日エネルギッシュに駆け回っているようにお見受けする。

紹介者C/T