bQ『創作・小幅掛け軸の世界を拓く』

今、旬の女性表装インストラクター
荒木行栄
荒木行栄さん 「表装」と言えば、日本古来の伝統的な掛け軸を思い浮かべます。荒木さんのそれは床の間の有無は関係ない。
「小幅掛け軸」は趣味の遊び心を満たすもので、床の間でも、洋間でも玄関廊下でも、わずかな空間があれば、楽しめるものです。

荒木さんが表装に興味をもつようになったきっかけは、20年ほど前、茶の心・表装の奥深さを教えてもらっているうちに、いつか自分もやってみたいと思いつづけていた。
その後10年も経って、50才代半ばになり、やっと岡崎市にある愛知県工芸訓練校・表装部門に入学した。ここの学生は表装関係の仕事をしている人が多く、表具店の後継ぎ達が大部分です。

プロを養成するところですから、先生の教えは厳しく修業に辛抱できない人もでてきます。掛け軸をまっすぐ掛けるためには、まっすぐ切ることが大切。ひたすらまっすぐに・・・。そのために包丁で切る。カッターナイフではなく。これがなかなかできない。ほかの学生は20代30代が多く、職場ですでにやってきている人がほとんどで、彼女は叱られてばかりでみんなの足手まといでした。真っ先に辞めていくと思われていた。家でつい愚痴ると、夫の「教えてもらっているという姿勢を先ず持て」という励ましに、3年間支えられて続いていきました。

荒木行栄さん訓練校卒業した後、自分ひとりで作品をつくり、友人知人に差し上げたりして楽しめばいいと思っていた。ところが、ライフデザイン研究所所長の佐藤美恵子先生が『荒木さん教室をもたれたら』というひと言で、これまた、あれよあれよという間に表装教室「一樹会」ができあがってしまいました。

その昔、表装を学ぶきっかけをつくっていただいた先生が、家庭用のアイロンでできる熱接着とカッターナイフで仕上げる方法を考案されていた。おかげで素人でもいろいろと楽しめる「自分で創る掛け軸」がつくれるようになりました。

たとえ身近に床の間が無くても、自分の好きな布、配色で創る楽しみは無限のようです。もちろん、「基礎をみっちり学び、さらにセンスもよく、真っ直ぐなこころを持つ」荒木行栄先生の指導があってのこと。
荒木さんが表装つくりにかかわって10年。無我夢中でした。「これとこれの組み合わせはどうかしら」「あらっ!!いいわねぇ!!」。「これをここへもってくればステキね、これでいきましょう!!」と、色合わせは、布との相談。裏打ちという仕事によって、想像を超える発見があり、これがたまらない魅力である。

最近、時間の余裕がいくらかとれるようになった夫から「これからは僕ができることは何でもしてあげる」と言ってくれる、今日もご飯だけは炊いておいて、と頼んできたわ、とうれしそう。

紹介者:C/T